考え方のちょっとしたヒント集,望月聖司
22.大怪獣パキラ

 私の会社には、1本の不思議なパキラがいます。
 この観葉植物は、以前、お客さんの会社の窓際で、植木鉢にひっそりと植えられていました。そして私が行くと、いつも寂しそうに話しかけてきたのです。「こんにちは。また来てくれたの。いつも私に気づいてくれるね」。
 あまりにも私に話しかけてくるので、ずうずうしいかなと思いながら勇気を振りしぼって、「よかったらこのパキラ、もらえませんか?」と聞いてみました。すると「誰もぜんぜん世話をしないし、かわいそうだから、よかったらどうぞ、どうぞ」という返事。
 さっそく事務所に持って帰り、水をあげました。すると、植木鉢の下から真っ黒い水が出てくるのです。もう土を洗うつもりで、じゃんじゃん水を流しました。するとヤニのような水が、次から次へと出てきます。水がキレイになり出した頃から、パキラがすっきりしたように感じました。そしてその日から、すくすくと伸び始めました。
 大きくなってきたので、植木鉢をひとまわり大きく、そしてちょっとオシャレなものに代えました。そしたらもっとすくすく伸び始めました。何年もの間、40センチくらいだったパキラが、1年もしないうちに一メートルをゆうに超え、丸坊主だった枝は葉でふさふさになり、別パキラになってしまいました。
 「ここはとっても居心地がいいんだよ」と言ってくれているようで、なんかうれしい。大怪獣になったパキラは、私とこの会社が好きなようです。

■人も植物も成長する場づくりのススメ
 風通しが良く、光に満ちて明るい。電磁波やアスベストなど体に害を及ぼすものがない。心安らぐ静かな音楽が流れている。活き活き能力を発揮するための設備や配慮がされている…そんな、人が気持ちよく過ごせる場所は、植物も動物も、みんな元気になります。どんな優秀な人でも、砂漠のまん中にポツンと置かれたら、どうしようもありません。成長するには、それなりの場づくりが大切です。


23.おはよう

 出社時間を一時間早くしてみました。いつもと辺りの様子がちがいます。
 まず、車の量が少ない。いつもだったら、ちょっと殺気立って、どこか一直線を見つめゴウゴウとうなりをあげて走り去っていく車も、おだやかに感じます。どことなく休日を思わせるものがあります。
 静岡はお年寄りが多いところです。特に自宅から会社にかけての一帯は、昔からある家が多いためお年寄りが目立つのですが、朝早いとお年寄りたちの雰囲気もちがいます。知らないお婆さんにいきなり「あんた、立派な体格してるね」なんて声をかけられるのです。そのつど「はぁ」とか、小声で「おはようございます…」なんて言っていました。
 ある日、向こうから一風変わったお爺さんが歩いてきました。そして、なんかちょっと変な爺さんだぞ、と思った瞬間に「おはようさん」と言われました。不思議な爺さんでした。そして私の口からも、しっかりした口調で「おはようございます」と出ていたのです。
 次の瞬間、自分の周りのすべてが実は「おはよう」と言ってくれているのかもしれない、と感じたのです。木にもおはよう。道路にもおはよう。当然、鳥や花にもおはよう。心の中であいさつをしながら会社までやってきました。まったく景色が変わっていました。
 自分の周りにあるすべての存在と、ちょっと会話ができるようになった朝でした。

■ゆとりを持った生活のススメ
 心にゆとりがあると、普段は気づかなかったいろいろなことが見えてきます。つい忙しい毎日に流されてしまいがちですが、心のゆとりは与えられるのではなく、自分で作り出すもの。ふと冷静に自分や周りを見つめられる瞬間を持てる、余裕を心がけたいものです。


24.イメージを考えてみる

 何人かでレストランへ行った時のことです。
 そこに「ごまアイス」というものがありました。「これ、おいしい」。女性の方たちにはとても好評だったのに、ある男性が、グレイ色をしたそのアイスを見てこう言いました。「見た目が悪いよな~」。
 一体、どの見た目が悪いのでしょう。ごまのアイスなのだから、ごまの色でいいのではないでしょうか。その男性は「食べ物ってさ、見た目が大事じゃない」と付け加えました。
 きっとこんな考えがまかり通って、人参やキュウリはまっすぐでなきゃ、とか、大根は真っ白でスラッとしてなきゃ、なんていうことになってしまうのでしょう。
 アイスは白い、もしくはさわやかな色のもの、というような決めつけたイメージを持っているのではないでしょうか。「お~、ごまの色がキレイに出ている、なんておいしそうなアイスなんだ」と言っても決して間違いではありません。
 よくイメージが大事なんて、わかったようなことを言う人がいますが、自分自身のイメージの持ち方の基準がおかしければ、見方も間違ってしまいます。
 これは人のイメージを見るのも一緒だと思います。

■決めつけないことのススメ
 「こうに決まっている」「普通はこうだ」と言うのは、根拠がなければただの思い込みです。かえってそちらの方が惑わされている場合もあります。食欲をそそるようにとか、よろこんでもらうために料理をきれいに飾ったり盛り付けたりするのはもちろん大切ですが、行き過ぎて不自然なことまでするのは違います。何事も、見た目は確かに大事ですが、中身を正しく見たいものです。


25.地球人として恥ずかしい

 「◯◯として恥ずかしい」という言葉があります。
 大人としてとか、男としてとか、◯◯家として恥ずかしいなど、さまざまな形で言われてきました。一企業の人間として恥ずかしいとか、日本人として恥ずかしいなど、誰もが何度か聞いたことがある言葉ではないでしょうか。そして一度は自分に投げかけられたことがあるのではないでしょうか。
 この「恥ずかしい」という言葉は、ひとつ間違えば見栄や体裁につながってしまうかもしれませんが、正しく捉えるのなら、とても大切なことでもあります。
 最近では国と国との境がなくなってきたと言われています。それは人種間の差別がなくなってきたとか、インターネットの普及だとか、経済や文化がひとつのものに統合されてきたなど、さまざまな理由が考えられます。そんな時「何々として恥ずかしい」という戒めをどこに持っていけばいいのでしょう。もう一民族とか一国家という、狭い境界の次元ではなくなっているのではないでしょうか。
 この広い宇宙にはすばらしい星がきっとあると信じています。平和で、美しくて、住民が幸せに暮らしている星です。そんな、どれだけすばらしい星が宇宙にあるのか、というイメージを膨らませるのがいいかもしれません。そして、そのすばらしい世界をモデルにさせてもらい、「地球人として恥ずかしい」といった戒め方を自分たちに課すくらいのものの見方が問われる時代になってきていると思います。

■思いっきりマクロに見ることのススメ
 人はみな、自分という個体を通して世界を見ています。そういう意味で誰もが自己中心であり、どうしても半径数メートルの狭い世界で行動してしまいがちです。人のことや周りのことを考えることが大切だとわかっていても、それがなかなかできないのが人間の心癖ともいえます。だからこそ、常にマクロにものごとを見ることを心がけたいものです。本当の「大切の優先順位」が見えてくると思います。


26.自分差別

 世の中には、人種差別をはじめさまざまな差別がありますが、私たちが気がついていない差別もあるのではないでしょうか。
 一般的に差別というのは他の人に対するものなのでしょうが、実は人は、自分をいちばん差別しているのではないかと思うのです。どういうことかというと、「自分なんか、何も才能がないから」とか「いい学校を出ているわけじゃないから」「家柄や育ちがいいわけじゃないし」などと思っています。
 またその反対に、「社長だから自分は偉いんだ」とか「いい会社に就職できたから」、「主人が出世したから」…などと思いこんでいる人も多いようです。中には、人の意見を聞いてかってに解釈し、「バカなこと言ってんな~」などとココロの中で根拠もなく自分の方が正しいと思っていたりする人もいます。
 このように卑屈になったり、反対に上から人を見下ろすような態度をとってしまうのは、本当の自分を知らないことから起きる、自分差別だと言えます。
 この自分差別をしなくなった時にはじめて、自分の個性や能力といった本当の自分が見えてくるのではないでしょうか。

■自分をまっすぐに見つめることのススメ
 苦労を経験することで良く変わる人もいれば、そうでない人もいます。それは苦労していない人にも同じことが言えます。苦労した・しない、育ちがいい・悪いが問題なのではなく、自分の置かれた立場をきちっと見つめていくことが大切なのではないでしょうか。人と比べてどうのこうの言うより、まず「自分という人」としっかり向き合いたいものです。


27.死に方の準備

 どんな死に方をするかは大きな問題です。死ぬことをいうなんて縁起が悪いなどと言う人もいるかもしれませんが、どんな人にも必ず訪れるのが”死“というものです。
 自分はどういう死に方をするのかをいつも考えています。それは布団の上でとか、病院でということではなくて、どんなことをやり遂げて、どんな気持ちで死んでいくか、ということです。
 自分の理想の死に方を実現させるには、それなりの準備をしておかなくてはなりません。
たとえば「自分の家の布団の上で死にたい」というのと「家族に見守られて死にたい」とでは、準備しておくことが違ってきます。この「どんな死に方」の準備をするかというのはとても重要なことです。
 大切なのは、いつ死んでも悔いが残らないように心がけること。それは毎日を精一杯、力の限りに生きるということです。そして、過去の自分をじょうずに精算する心を持つこと。あんなことをしてしまったとか、もっとあれをやっておけば良かったとか、自分の人生なんて、などと考えない。どんなことも、実はすべて意義があることだったんだと思える自分になることです。
 こうやって一つずつ死に方の準備をすることが、結局は生き方を見つけることにつながっていくのだと思います。

■締切りを持つことのススメ
 死ぬということは人生の締切りです。それもいつ訪れるかわかりません。締切りとして意識することで、いつまでに何をするかという人生目標を持つことができます。普段の生活の中でも、目標には必ず締切りを設けることが大切です。その期日を目指して少しずつ取り組んでいくことで、実現につながっていくのです。


28.自分の形をイメージしてみる

 大学で自分CI(コーポレート・アイデンティティ)という授業をしています。学生たちがそれぞれ自分を見つめて、自分を表現するマークを作成するという内容なのですが、これがみんな、まったくと言っていいほど形が思い浮かばないようなのです。
 形が浮かばないということは、自分がどんな人間なのか、どんな想いを抱いているのかがわからないということです。
 ところが、とりあえず「進む」というキーワードはみんな持っているようです。そして多くの学生が、その「進む」というキーワードを矢印で表現します。
 一言で「進む」と言っても、物理的に前に移動するという意味もあるし、成長するとか上達するという進み方もあります。それを表現する矢印記号は、先哲者があみ出してくれたひとつの優秀な形で、力強く何かを指し示してくれるものです。
 しかし、あまりに優れた形であるために便利だからと安易に使ってしまうと、他の人との差別化ができず、もっと自分が見えなくなってしまいます。
 多くの情報の中でさまざまな価値観が交錯する今、人が自分の形を見ていくことがますます大切になっているのではないでしょうか。将来どういう自分になっていたいか、自分を色に表すとどんな色なのか、人間という形をはずした時にはどんな姿形になるのか。
 誰もが、いくつになっても、心の中に「どんな自分になるのか」「どんな人生を送るか」という絵を描けるアーチストでありたいものです。

■人生をイメージで創り上げることのススメ
 「自分の個性を大事にしたい」と言いながら、同じファッションに身を包み、自分を殺している人たちがいます。人と同じことをしていれば安心かもしれませんが、そこに自分はありません。誰にも、その人ならではの才能や人間的魅力があります。自分の人生の物語をイメージし続けましょう。きっと試行錯誤しながら、自分らしさが探し出せるはずです。


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