考え方のちょっとしたヒント集,望月聖司
29.自分人生

 仕事の取材で企業の社長さんや働いている方たちの話を聞いたり、個人的に相談にのってほしいなどと頼まれたりして、これまで「さまざまな人生」の話を聞いてきましたが、どの人の話を聞いてもけっこう感動します。ひとつのドラマのようです。
 みんな、それぞれ一生懸命に生きてきたんだなと、胸が熱くなってきます。
 このように身近な人の感動的な話を聞いていると、ガンジーとかヘレンケラーとかエジソンという歴史に残る人たちの偉人伝というものは、小説を読んだり映画を観るように感動できますが、あまりにすごすぎて、何か自分とはかけ離れた世界のことのように感じてしまいます。
 メディアが発達したことによって世界中のいろいろな情報が届くようになり、世界中のすごい人の話が伝わってくるようになりました。しかし逆に、自分の身近にいる人の人生に目がいかなくなっているのではないでしょうか。偉業を成し遂げた人生はすごいけれど、平凡に見える人生は興味がない、などと思ってしまってはいませんか。
 人生の成功のヒントは、もっと身近にあるのではないかと思うのです。お父さん、お母さんの人生はどうだったのか。近所のおじさんや会社の上司、学校の先生の人生はどうだったのか。
 もっとそばにいる人に目を向けていくと、自分の人生も見えてくるような気がします。

■人生のモデルは身近から探すことのススメ
 「尊敬する人物」などと言うと、つい、何かすごいことを成し遂げた立派な人を連想してしまいがちですが、そうではないと思います。まず身近な、人として人らしく、あたたかく優しく生きた人の価値を認められる人間でありたいものです。きっとあなたの周りには、いい体験をしてきた人たち、見習える部分を持ったすごい人たちがたくさんいるはずです。


30.「何々とは」と考えてみる

 ものごとを深く見つめていくには、「~とは何だろう」と考えてみるのがいいようです。
 私の場合でいうとグラフィックデザイナー出身なので、「グラフィックデザインとは」「グラフィックデザイナーとは」ということを考えてきました。
 考えていくと、答えはひとつではないことがわかってきます。いろいろな捉え方が出てきて、そのどれもが間違いではないのです。
 そしてもうひとつわかったのは、気づいたことをただ想っているだけでなく、書きとめておくことが大事だということです。そうしないといつまでもあいまいなままで、しっかり心に残らないからです。毎日、毎日、思いついたことを書きとめていくことを続けていくと、プロとして本物に近づくスピードが早くなるようです。
 生活の中でも、「父親とは」「優しさとは」「人間付き合いとは」など考えることはいっぱいありますが、最近は「自分とは」と「経営とは」と「経営者とは」、そして「教育とは」を深く考えるようになってきました。周りばかりが気になっていた自分が、やっと自分と自分本来の仕事に目を向けられるようになってきたのかもしれません。
 ガンジーの言葉に「怒りをおぼえたら、怒りにまかせず何故この怒りが生じたのか考えなさい。そしてそれを紙に記しなさい」というものがあります。ささいなことと流してしまわず、少しずつ自分の想いを書き記していこうと思います。

■書くことで想いをはっきりさせることのススメ
 世の中、考えていない人はきっといません。でもその考えがうまくまとまらないのは、頭の中だけで漠然と思ってあいまいなままにしているからです。書きとめるという作業は、形のなかった「想い」を形にして確かめるということの第一段階です。自分の意外な想いに気づいたり、ものごとを深めていけたりします。


31.ココロの整理整頓

 大学に教えに行っていて思うのは、学生は話しかけないとなかなか話さないけれど、いったん話しはじめるととりとめもなく話し出すということです。どうやら、うまく自分の想いを言葉にできないようなのです。
 学生だけではなく、大人もそうです。相談ごとでは、たいていの人が思っていることをうまく話せなかったり、気持ちの整理や考え方の整頓ができないのがよくわかります。
 以前は、そんな人たちと話しているとすぐに「それはこういうこと?」「こうしたらいいんじゃないの」などと意見がましいことや、解決するための具体的な方法を言ってしまっていた…というより押しつけていました。しかしそれはいけないことだと気づきました。
 まずは相手の話をよく聞いて、その脈絡がないように感じる話の中から、いくつかのキーワードを見つけます。そして「あなたが話している内容の中には、これとこれとこの問題が入っていますね」と投げ返してあげると、意識していなかった自分の想いに気づいてびっくりします。
 そうやって本人の気がついたことに、具体的な方法のヒントを提案してあげるととてもわかりやすくていいらしいのです。そしてもうひとつ大切なのは、そうはいっても結局、どのやり方でいくかは本人が決めるべきだということです。
 このような場面に遭遇するごとに、部屋の片づけと同じようにココロにも整理整頓が大切で、日頃からやっておけば後が楽だと実感します。

■考えをルール化することのススメ
 何かものごとに向かい合った時に、そのつど解釈していたのではココロの中が混乱してしまいがちです。すばやく気持ちを整理するためには、普段から自分の中で考えや判断の基準を作り、それをルール化してみてはどうでしょう。「人にはとにかく優しくする」「心で人を責めない」など、「正しく便利なルール」をいかにパターン化できるかで、ココロの整理整頓の効率がちがってくると思います。


32.自分との対話

 人間は一人格ではありません。その時、その時の自分の都合でころころと考え方も想いも変わるものです。
 二重人格とか多重人格などという言い方をすると、何か病気のようなイメージがしたり、いい加減な人のような感じがして聞こえが悪いのですが、そういう特別なものではありません。
 誰もが自分の中に何人もの自分を持っています。なまけ者だったり、がんばり屋だったり、わがままだったり、優しかったり、まじめだったり、嘘つきだったり、いじけっ子だったり。そのどれもが、まぎれもない自分です。
 でも、その中にも「真の自分」がいます。人として理想的な自分です。なのに、理想的な方向へ自分をうまくコントロールできないのは、理想の自分とそれ以外の自分がうまくコミュニケーションできずに話がまとまらなかったり、どちらかに偏ったりしているからなのです。理想の自分を司会者にして、いつも有意義なココロの会議を開くことができれば、納得のいく自分でいられるのではないでしょうか。
 身の周りにいる人たちとのコミュニケーションと同じように、自分の中にいる人たちとの対話を大切にしていきたいと思います。

■自分の中の自分たちを受け入れていくことのススメ
 人格は気分で変わる、状況で変わる、相手によっても変わります。聞いている音楽に影響されているような場合もあります。無理にいつもいい人でいる必要はありませんが、どんな人間になりたいかを考えなくなったら、そこで成長は終わってしまいます。いろんな自分を受け入れながらも理想をイメージしましょう。しんどいと思うかもしれませんが、本質ではない言動をしている方が、もっと苦しかったりするものです。


33.変わる人、変わらない人

 何回注意しても変わらない人がいます。「どうしてこんなに簡単なことに気をつけられないんだ!」とカリカリして、もう言うのがイヤになってしまい「結局人間は変わらないんだ」なんてあきらめてしまいたい時があります。
 しかし、その変わらない人を見て「信じられない!」なんて言っている人自体が、実はいつまでたっても変われない人だったりします。いつまでたっても良くならない人を見たら、「そうか、人によっては変われない人もいるんだ」と思えるような自分に変われればいいのに、それができなかったりするのです。
 結局は、こちらから見て変わらない人と同じなのです。何を言っても変わらない超ガンコな人は、それと同じくらい超ガンコな人を変えてくれるために存在している、と考えられます。どうも世の中、受けとめ方しだいで、とてもありがたい仕組みになっているようです。
 相手が変わらないと思ったら、まずどうしたらわかってもらえるか取り組んでみる。それでも変わらないのなら、わかってもらえない自分なんだと見返る必要があります。意外と自分も、ガンバっているつもりでも「できていないじゃないか」と言われ、ついぶ然としてしまうことがあります。でも言われるからにはできていない部分がきっとあるのだと、それを受け入れていけばきっと人間に幅が生まれてくるのではないでしょうか。
 どんなにムッとしても、結局、自分に置き換えることでしか変化は生じないようです。

■まず自分の感情に打ち勝つことのススメ
 自分の意にそぐわない人間を心の中で排除しても、また意にそぐわない人は現れます。永遠に同じことを繰り返すのか、どこかで受け入れていくのか、その差はそれこそ天国と地獄。よけいな苦しみから一刻も早く抜け出し、イキイキと生活するためにも、変われる自分であることが大切なのではないでしょうか。仕事も生活も恋愛も、みんな同じことだと思います。


34.間違いは正解の素

 多くの人は、「間違う」のはいけないことだと思っているようです。そして、なるべく間違わないようにしています。
 ミスを犯さないように気をつけるのはもちろん大事ですが、間違いを悪者あつかいするあまり、間違えば落ち込み、人の間違いは責めてしまうということはありませんか。
 はたして、今まで間違ったことのない人がいるでしょうか。それどころか間違ったおかげで理解が深まったり、次のステップへ心置きなく進むことができているのではないでしょうか。
 間違いは正解への道案内をしてくれます。大切なのは、正しく間違うこと。そのために、間違った時にしてはいけないことがあります。「言いわけをする」「忘れようとする」「人のせいや環境のせいにする」「落ち込む」などです。では間違った時にやっておくべきことは何でしょう。「反省をする」「関係者に謝る」「原因を探る」「必要になるまで大切にココロにしまっておく」などではないかと思うのですが、どうでしょうか。
 間違いを言い換えるなら、それは「経験」です。広告人として、自分が手がけた仕事、たとえばポスターなどを壁に貼っておくのですが、何日か見ていると「あっ」と思うことがいくつか出てきます。「もっとこうすれば良かった」という意味での間違いに気づくのです。これは、自分の段階的成長を確認するための作業なのです。
 大切なのは正しく間違う毎日の積み重ね。間違いは正解の素だと思います。

■言いわけをしないことのススメ
 「言いわけ」とは、なぜ間違いが起きたかという原因や理由を追究するのではなく、間違いを犯した自分を正当化しようとするものです。だから結局はスジが通らないし、はたから見てもみっともなく映ります。間違いを犯したら素直に謝って、なぜそうなったのかの原因探しと問題解決に力をいれた方が、周りの人の新たな信頼を勝ち取ることができるのではないでしょうか。


35.小さかった頃

 「小さかった頃」といっても、子供の時ということではありません。自分が人間としてもっと小さかった時のことです。
 誰かと会う時、苦手な人に対しては妙に引いてしまったり、好きな人や得意な人に対しては妙になれなれしかったり。とにかくムラがありました。
 特に、有名な方や専門性の強い方とか、すごい人なのではと感じる人には、意味もなく緊張していました。
 それはきっと、自分の底の浅さを見破られるのが怖かったからだと思います。ちっぽけな自分の自尊心を守るために、差があり過ぎる人には媚びを売って、ちょっとだけすごそうに見える人には虚勢を張る。
 振り返ると恥ずかしいのですが、そんなことを続けてきました。
 しかし、恥ずかしいと思えるようになっただけでも、多少成長できたのではないかと思うのです。今では、そんな苦手だった人たちに、どんどん会いたいくらいです。なぜなら、すごい人はその優れた部分のすばらしいモデルになってもらえるからです。すごい人を知ることで、自分の悪いところや小さいところを教えてもらえるのもありがたいことですし、自分にない知恵や専門性をアドバイスしてもらえて、とてもお得だと思います。こうやって怖いものがひとつ減った今、人と会うことや人生がとても楽しくなりました。

■あなたらしい積極人生のススメ
 何かの専門家だったり地位や名誉がある人だからといって、人格者とは限りません。すごいといわれる部分は尊重するにしても、その人と自分とを見比べて卑屈になる必要はないし、逆に本当の人格者に出会ったのなら、それこそすごいことで、教えてもらうことは山ほどあります。まず、今の自分のありのままの姿、つまり等身大の自分を受け入れ、卑屈にならない。それだけで、かなり積極的に生きていけるのではないかと思います。


以下のサイトの、サイト運営、サイト制作、VI制作、パッケージ制作などはすべて VW-STORK が行っています。