ある年のクリスマス、踊るサンタクロース人形が流行しました。音楽にあわせて腰をふって踊る人形です。
その後、商店街のディスプレイに採用されました。アーケードの中に5メートル間隔で吊るされた赤くてまるいクリスマスリースの中で、何十体ものサンタがいっせいに踊っているのです。どこを見てもサンタ、サンタ、サンタ…。
このディスプレイを依頼されたデザイナーは、このサンタを使う企画が頭に浮かんだ時に「しめた!」と思ったはずです。自分で一から作り上げるより、インパクトのある既製品を使った方が、それほど創作の労をかけなくても確実に印象的にできるからです。
どこの世界でも、自分たちで流行を生み出すのではなく、流行を利用するパターンばかりが目につきます。しかも、いっぺんに露出度を上げるため、あっという間に古いものにしてしまいます。新しいものをあさっては一時に集中して売りまくり、どんどん使い捨てることの繰り返し。
翌年のクリスマスに、この踊るサンタをまた使ったら世間の反応はどうでしょう。「もう古いよね~」という言葉が聞こえてきます。
もう何かに便乗するような利用の仕方はやめよう、うわべだけを重視する価値観は捨てよう。流行という津波にあとかたもなく運び去られてしまうだろうサンタ人形を見て、すこし悲しいクリスマスを感じてしまいました。
■流行が去っても価値を認められることのススメ
流行のスパンがどんどん短くなっている今、私たちは、その商品の善し悪しを、新しい・古いということだけで決めてはいないでしょうか。そして本来の楽しみ方や使い方を忘れ、見栄のために必死に流行を追っているところもあるのではないでしょうか。流行に関係なく、その物の価値はあるはずです。流行が去っても、価値を認められる自分でありたいものです。