
豚博士の桑原さんと豚肉会議を開催。
高品質の豚肉を生み出す桑原式などについて
いろいろ教えていただきました。
●豚の畜産県は?
毎日の食卓に欠かせない豚肉。生産地としては、鹿児島、宮崎、千葉などが盛んなようです。これだけの生産数があるから、リーズナブルにおいしい豚肉がいただけるんですね。

豚の飼育数の都道府県ランキング(H28年)
●豚肉の生産頭数は?
日本人1人が1年に食べる豚肉の量は、1960年には1kgだったものが、2013年には12kgと12倍に。高度成長期以降、いかに日本人の食生活が様変わりしたかが分かります。
しかし、生産頭数は1990年度の154万tをピークにわずかに減少傾向に。豚舎を建てるにはバイオマス、堆肥舎、浄化槽等を付ける必要があるなど、海外と比べても日本が一番厳しい条件があったり、住宅地にはなかなか建てられないなどの環境条件や、海外からの輸入量が増加しているなどの理由が考えられます。

農林水産省「食料需給表」
●日本における豚肉の歴史
戦後、広く普及した豚肉ですが、実は江戸時代から食べられていました。最後の将軍 徳川慶喜公(今年の大河ドラマのヒー様ですね)などは、「豚一さま」と呼ばれるぐらい豚肉がお好きだったとか。
国が本格的に養豚を始めたのは明治2年。
当たり前に豚肉を食べている外国人のように、豚から動物性タンパク質を摂り、日本人の体格を良くすることが目的だったそうです。富国強兵は体格作りからということだったのでしょう。
当時、明治政府はイギリスの指示を仰いで国作りを進めており、そのイギリスが豚の生産国だったため輸入を奨励したという背景もあるようです。
●豚の品評会について
豚の品評会は毎年、各都道府県で開催されます。
規模が大きいのは横浜、東京、名古屋の市場。評価は、上(0.01%)、上(30%)、中、並、等外という5段階でランク付けされると前回の記事「●豚肉の等級について」でご紹介しました。
この中で、極上の評価を受ける豚のほとんどが桑原さんの所から供給された豚で、桑原さんの種でないと良い評価は得られないというのが豚市場の暗黙の了解になっているのだとか。
●桑原さんの賞歴
桑原さんの豚肉の品質は、これまで受賞した数々の賞歴でも証明されています。
・1980年より…種豚共進会において農林水産大臣賞受賞(通算8回)
・1994年…第1回日本生胚移植研究会「桝田賞」受賞
・1995年…(社)日本家畜人工授精師協会「西川賞」受賞
・1999年…オランダのレトリストで開かれた世界最大の農業展でVIB賞(上位5社)…精液を希釈する機材で受賞。世界で一番保存性が良いとされる。
・2003年…日本農業賞 特別賞受賞
●桑原式の交配について
なぜ、桑原さんはこのような優れた豚を生み出せるのでしょう?
❶育てている種豚の種類数
まず育てている種豚の種類数が違います。
一般的な日本の養豚場は、売れ筋の2種類ぐらいの種豚しか飼っていない所が多いのに対し、桑原さんの農場では、世界6大豚のほか、満州豚、マリガリッツァ、民豚などの原種、希少種や、同じランドレースでもタイプの違う種類、掛け合わせの1代目、2代目など多種多様な種類を常時4000頭生産しています。
❷すべての家系図を管理し交配
さらに、これらの豚の家系図をすべて管理。
通常は決まった交配を行うのに対し、桑原さんは各種の特徴を把握して個性を見ながらいろんな原種をかけ合わせて独自の交配を行い、改良しているのだそうです。しかも何世代も前から改良を積み重ねるため、数年でできるようなものではないのだとか。優れたサラブレッドを育てているようなものですね。
❸オーダーメイドも可能
桑原さんの農場では常に豚の凍結精液を5万本保存していて、これは世界でも5本の指に入る量。そのすべての個性を把握しているため、例えばシェフの「こんな豚肉がほしい」というオーダーメイドに合わせた改良も可能なのだとか。「でも既にいろいろな改良豚を育成しているので、その必要はあまりないかもしれませんね」とおっしゃいます。
❹飼育環境へのこだわり
他にも、徹底した衛生管理や独自のエサへのこだわりなども大きな要因と言えます。世の中にSPF豚というのがあるのをご存意ですか?これは帝王切開して産ませた豚のこと。子豚というのは、母親の産道を通る時や、生まれた環境によってすぐに病原体に感染しやすいため、そのリスクを避けるために帝王切開で産ませることがあるのですが、桑原さんの農場は徹底した衛生管理をしているのでその必要がなく、常に自然分娩。
また、大手飼料メーカーの傘下にある農場は、そこの飼料を使わなければならないなどといった制約があるのに対し、桑原さんは独立独歩でやっているため、飼料の工夫など育種、改良の自由度が高いのです。
このようにして生まれた桑原さんのオリジナル豚ですが、豚というのはなかなか新しい品種認定をしてもらえないらしく、ルイビ豚やセレ豚という名称も、品種ではなくブランド名として付けたもの。
また百貨店のプライベートブランドとして「朝霧高原豚」などといった名称で販売されています。